2016年9月18日〜9月23日までドイツハイデルベルグで開催された第四回Heidelberg Laureate Forum(HLF)にJDC財団理事長石田がゲストとして招待されました。石田による滞在記です。
先ず最初に、2016年 4th Heidelberg Laureate Forum にJDC財団の支援を受けて渡邉洋平さんが参加されたことをお知らせするとともに、そのことによって当財団の最初の支援事業を成功に導いてくださった渡邊さんに感謝申し上げます。
<HLFの開催場所は?>
フランクフルトから陸路1時間、ハイデルベルグに到着。ネッカー川を水路に中世から続く落ち着いた町。ドイツ有数の観光地である町の中心は教会と大学。いずれもおとぎ話の挿絵から出てきたような可愛さと秩序と威厳が同居する建物。
その大学を開催地に、世界中から数学及びコンピュータサイエンス分野の若い研究者200人を招待してHeidelberg Laureate Forumが開催された。
<HLFの目的は?>
「若い研究者の啓蒙とNetwork 作りに貢献するために」を目的に周到に準備し実行された国際会議。
LaureateとはTuring 賞、Abel賞、Fields 賞の受賞者たちで、若い研究者たちは憧れの先生方と伴に1週間勉強し、会食し、街を歩き、博物館に出掛けた。
事務局はYoung Researchers 一人一人にHLFのロゴと本人の写真入りの綺麗な名刺を100枚ずつ準備し、また参加者全員のカタログと言える名簿も印刷して手渡している。
<HLFの背景は?>
1950年に設立されたLindau会議をお手本にLindau会議 http://www.lindau-nobel.org には無い分野、数学及びコンピュータサイエンス分野の発展に寄与するため、Tschira財団の支援の下に設立されたHeidelberg Laureate Foundationが支援主体となっている。もちろん、ACMやドイツの産業をリードする会社などもこぞって協賛している。まさにドイツを挙げての支援体制で、招待Young Researchersは食費を含む滞在費のすべてをカバーされている。
<HLFの行事の内容は?>
約1週間にわたる講義と行事の内容は充実しており、Laureates達はそれぞれ「科学者として成功する道」や「最近の研究について」を語り、専門分野に分かれて開かれるWorkshopではYoung Researchersの質問に飽きず答えてくれる。
語り合うに充分な時間を取ってあるCoffee Break やLunch TimeもNetwork 作りに欠くことが出来ない貢献をしている。ギルドハウスや古城で開かれる華やかなBanquetでは名物のビールやワインを片手に夜を徹して語明かす。
<HLFの参加者は?>
願書を出したYoung Researchersの出身国は数十ヵ国にわたり、研究者はBA, MA, PhDの3つのカテゴリーで招待される。従って参加できるチャンスは4回。(もちろん4回目はLaureateとして)
今回はLaureateとしてFields賞の受賞者の森重文先生、広中平祐先生のお二人が参加された。また、日本からYoung Researchersとして2名が招待され、内1名は渡邉洋平氏。運営委員会から独立している選考委員会が招待者を選んでいるが、選考基準は明らかにされていない。
<HLFと日本の学会との関係は?>
日本数学会はHPにてHLFを紹介している
事務局から当財団に投げられた質問は、2016年は日本から3通の願書が届いたが、日本の研究機関の数、及び研究者の数から鑑みて極端に少ないのはなぜか。
JDCの答えは、日本ではHLFの知名度は低く、浸透していない。また、日本の研究機関は必ずしも研究者の海外派遣を推奨していないのでは?
<今後JDC財団としての取り組みは?>
JDC財団のHPにてHLFの紹介を行う
今後もHeidelberg Laureate Forum へ研究者を送る
日本の研究者のために、既に海外に出ている研究者との交流会を実施する
同時に内外の研究者に日本固有の文化を理解してもらうための努力を続ける。殊に江戸時代に発展した和算とそれを支えたと思われる算額文化に光を当てる。ひいては一神教とは一線を画す神道(Shintoism)への理解を深める。